次元が帰ってきたとき、ちょうどルパンが出かけるところだった。
車に乗り込み、エンジンをかけた相棒は、次元に気づくことなく、急いだ様子で車をスタートさせた。
声をかけるまもなく、ひどく煙った排気ガスを撒き散らしながら車は急にスピードを上げて、次元の前を通り過ぎて言った。
・・・やれやれ・・・また女からの呼び出しか?
排気ガスを手で払いながら、次元は小さく首を振り、車を見送った。
買い物帰りのたくさんの荷物を受け取ってもくれやしない。
ため息をつきながら、両手いっぱいのものを抱えなおし、ドアを開けた。
・・・ったくよぉ・・・泥棒が鍵かけないでどーすんだよ・・・
もっともその所為で荷物を入れるのは楽だったが。
靴を放り出すように脱ぎ捨て中に入る。
リビングのテーブルの上に、食べ散らかした後のジャンクフードの袋がある。
何本かのビールの瓶が床に転がっていた。
・・・また俺が片付けんのか・・・
いつものこととは言いながら、いい加減に腹が立つ。
なんでも後始末は次元に任せ、楽しいとこだけ持っていく相棒に。
とりあえず、両手いっぱいの荷物をダイニングのテーブルに置いた。
それから床に落ちているビールの瓶を拾おうとして・・・気づいた。
あ?
ソファの上にこんもりと毛布が盛り上がっている。
その大きさからいって、誰かが寝ていることに間違いない。
女ぐらい片付けてから行けっ!
心の中で毒づきながら、さてどうしようかと考える。
この間もものすごく毒々しいパンクな女が寝ていたのでためらいもせずにたたき出したら、あとでルパンにひどく怒られたのだ。
何でも、どっかの有名なロックシンガーとかで・・・
ロックなんて聞きゃしないからわからない。
とにかく、ここでおそらく楽しんで、そのまま女が寝てしまったのでルパンは出て行ったのだろう。
多分、別の女に会いに。
お嬢さん、あんな男と付き合ってるとろくな事はないぜ・・
自分のことは棚に上げ、そんなことを心の中でつぶやいてみる。
とにかく、出て行ってもらうしかない。
下手に残っていられて・・もし、本当にルパンが女を連れて戻ってきたら・・・修羅場を見るのは多分俺だ・・
大きなため息しか出やしない。
やさしく起こして、どこかに送っていくしかないだろう・・・・ああ・・・そのとき金を要求されたら・・・俺の払いになるんだろうなぁ・・・
自分はいいことをしてもいないのに、金だけとられたら馬鹿みたいだ。
あとでルパンに倍にして請求するつもりで、そっと毛布の上から、その体をやさしくゆすった。
「お嬢さん、おきてください」
極力やさしくそういった。
まぁ、ルパンとやるくらいだ、お嬢さんではないとは思うが・・それでも、そう呼んでおかないと、女というものは怒るらしい。
だが、まったく相手が起きる気配はなかった。
そんなにお疲れですか・・・真昼間っから・・・ったくよぉ!
今度は少し乱暴にゆする。
「おい、起きてくれよ、おい」
そして願わくば、そのまま素直に出て行ってくれ。
だが、かなり乱暴にゆすったにもかかわらず、動く気配はない。
そのかわりわずかに毛布がずれ、黒髪が覗いた。
短い髪。ルパンの好みはどちらかといえば、フェロモン系で、ボーイッシュとかばいセクシュアルやインテリジェンスな女ではなかったはずだが・・・
そう思いながら、更に乱暴に体を揺する。
毛布の上からでも、手に触れる感触は妙にごつい。
・・・・どういう女を引っ掛けたんだよ、あいつ・・・
出て行かせるのにてこずるようなのは勘弁してくれ。
体にかかっていた毛布がずり落ちた。
あ?
短い髪からつながる、妙に短くてごつい首。
そのまま、がっしりとした広い肩につながり、むきっとした腕が目に入る。
鍛え上げられた上半身を持って・・・
・・・これ・・・ひょっとして男?
あまりに女にしては骨格が違う。
あわてた次元は、すべての毛布を剥ぎ取り、そのままその体をソファの上から落とした。
ごんっ・・・という鈍い音とともに、その体は床に転がる。
・・・・・・・・・うそ・・・・・・
思わず帽子を取る。
目をこする。瞬きをする。眉間を揉む。頭を叩く。首を振る。目を閉じる。もう一度開く。
・・・・まじかぁ・・・・
床に転がされても、まったく起きる気配のないその肉体は、ごつい男のもので・・
・・・銭形じゃん・・・
唖然としたまま、その転がった体を見つめる。
明らかな情欲の後を残したままの体は何度見つめなおしても消えることはなかった。
体中に、赤い印をつけ、頼りなく横たわった体。
どこかやつれたようにすら見える顔は、どう見ても事後だ。
・・・・・待てよ、待ってくれよ・・・・
頭を抱えて次元はうめいた。
ルパンは女専門だったはずだ。
いや、たとえ違ったとしても・・・こんなごつい、中年親父をどうして・・・・
恐る恐るもう一度確認する。
何度見ても銭形だった。
それもどう見ても、やつれはてるほどにたっぷりと愛された後の・・・・
・・・なにがあったんだ・・・なにがお前を・・・
思わずここにはいないルパンに訴える。
どうしてこんな親父に手を出したんだ!
だが、とりあえずの問題は、ここで銭形が転がっていることだった。
何度見ても今まで見慣れた女の姿じゃない。いや、ある意味もっと見慣れてはいるんだが。
何度ゆすっても銭形が起きる気配がないところを見ると、どうやら何か薬でもかがされているらしい。
それとも注射でもしたか?だとすると、象用のでかい注射器がいるだろうに・・・・
まぁ、多分、急にいつものように銭形がアジトに踏み込んできて、それでルパンがあわててそこらにあった薬でもばら撒いた。そしたらそれが媚薬で、二人ともその気になって・・・ってところだろう。
そんで、先に目の覚めたルパンが銭形を見て、恐れおののきとんずらをした・・・
次元はそう自分で納得すると、首をひねる。
でも・・・・・・これで・・・もし銭形が目が覚めたら・・・・
それを想像すると、次元はひたすら気分が重くなる。
まさかとは思うが、自分の体を見て、何が起こったのかを感知し・・・そしてその場に次元がいたら・・・
間違いなく、自分をこんな目に合わせたのは次元だと思うことだろう。
そしてためらいなくいいわけなど聞かずに銃を向けることだろう。
次元は哀れ、男を薬で眠らせ無理矢理やって、その上で射殺されたというものすごい不名誉な汚名を着せられて・・・抹消・・・
暗い暗い未来が待っている。
このまま銭形をどっかに捨ててこようか・・・・
そう考えたが、だとしてもこのアジトを知られているし、何よりこの体についた後を見れば、何があったか一目瞭然。
そんでやっぱり怒りに任せて踏み込んできて・・きっとルパンのことだ、次元のことをいけにえにささげるに違いない。
暗い未来に変わりはなさそうである。
・・・どうするか・・・
転がった体を眺めながら、次元は必死で考えた。
何とかこの暗い未来から逃れるために。
そうだ、これは夢だ。
自分が納得してもしょうがない。
銭形にルパンのアジトに踏み込んだという夢を見たんだということにしてもらおう。そうだ、銭形は女といい事をして、そのまま眠って、夢の中でルパンのアジトに踏み込んで・・・いや、そっから先は多分覚えてないだろうから・・・それがいい、この体についたのは、情熱的な女がしたということにすればいい。銭形をどっかの安ホテルに捨てといて、その場に女からのようなメッセージでも残しておけば・・・
自ら思いついた案が妙に気に入る。
なぁに、たまには銭さんにも女にもてたといういい気持ちを味わってもらおう。そうすりゃ、悪い事はなかったことにできるってもんだ。
早速この案を実行に移すべく、次元は銭形の服をかき集めた。
そして、転がっていた銭形の体にいやいやながら抱き上げ、運ぼうとした。
・・・うわっ・・・・
脇に手を入れ立ち上がらせたとたん、銭形の太ももにどろりとしたものがこぼれたのが見えた。
生かよ・・・ゴムぐらいしろっ!
だが、こんな証拠が残っていたら、いくら鈍すぎる銭形でも、女といい事をしたとは信じないだろう。ということは・・・やっぱり暗い未来だ・・・
・・・・・・・証拠隠滅・・・・・
自分のものならまだしも、なぜ他人のものを始末しなければいけない・・・
それも、男の体の中の男のものを・・・
ものすごい情けない気持ちでとりあえず次元はしゃがみこんだ。
なるべく見ないようにしながら、銭形の足を持ち上げる。
自分の肩にかけるようにしながら、そろそろとその後ろに手を伸ばす。
・・・うげっ・・
その角度からだと、見事な銭形のものが目に入る。
というか、手に触れる。
触っちゃったよ・・・触っちゃったよ・・・・
奇妙に柔らかいようなその感触に、鳥肌が立つ。
自分のものなら平気なくせに・・・
こ、この姿勢はまずいな、とてもとても気持ちが悪い。
銭形をうつぶせに、床に伏せさせる。
そして足を広げさせ、なるべくまた見ないように、その後ろに手を伸ばす。
こ、この辺かな・・
しりの割れ目をなぞるように指を動かし、そのすぼまった箇所を探る。
銭形の口からかすかな吐息が漏れた。
それに驚き、部屋の隅まで逃げ飛んでいく。
・・・・・起きて・・・ないか・・・・
おどおどしながら、戻ってくると、また、同じように、しりを探る。
引き締まった筋肉質の柔らかさのかけらもないような尻。
・・・・つまんねぇ・・・・
すぼまった箇所を発見すると、また銭形が甘い吐息を漏らした。
中年親父が変な声出すんじゃねぇよ!
心の中で毒づきながら、そっと指を入れると、ねとりとしたものが指先を伝わるのを感じた。
うわぁ・・・・すんげぇたっぷり・・・
指先でそこを押し広げるようにして、中のどろりとしたものを掻き出す。
口を開かせたとたんに、あふれるようにそれが体の中から流れ出てくる。
・・・こういうのって・・・どこまで入ってるんだ・・・・
素朴な疑問とともに、指をそろそろ遠くに入れる。
ルパンのものは何度か見たことがあるだけに、これほどたやすく指が入っていく理由がわかり奇妙な同情心が浮かぶ。
薬でらりってたとはいえ・・・大変だねぇ・・・銭さんも・・・・
中から出てくるものをティッシュでぬぐいながら、指先で中を探る。
銭形が甘ったるいあえぎをもらした。
・・・・・・なに・・・
指先が締め付けられる。
まるで女の中のように、ぎゅっとすぼまり・・いや、それ以上にきつく締め付けてくる。
・・感じてんの・・・・?
ゆっくりと指先を抜くようにすると、まるでそれを阻むかのように、更に奥がしまるのを感じる。
そっと奥に入れると喜ぶかのように、体がかすかに震える。
声にならない喘ぎが聞こえた。
・・・・うそだろ・・・何・・・銭さん・・・あんた・・・
どきどきしながら、指を曲げ、その内壁をこすってやると、明らかに快感の喘ぎが上がり、痛いほどに締め付けられる。
その食いちぎりそうなほどに強い締め付けに、驚き、そしてちょっとだけ感動する。
更にねだるかのようにわずかに腰が揺れる。
ま、待てよ・・・待ってくれよ・・・
そう思いながら、更に大胆に指を動かす。
そのたびに、締め付けられ、そして喜びの動きを示すからだ。
・・・まだ・・・薬がきいてんのか・・・・
必死で理性を呼び戻す。
頭の中でそう考えながら、それでも指をぬくことはできずに動かし続ける。
指を出し入れするたびに、そこから漏れるようにどろどろとしたものが流れ落ちる。
・・・・あ、洗わないと・・・・
体中に匂いがこびりついている。
自分のものだと思ってくれればいいが・・・この人、いくらなんでも一晩にそんなにたくさんはしないだろう・・・ってか、するのはルパンだけだと思う。
名残惜しい気持ちでいっぱいで、それでも指を抜く。
まるでねだるように腰が動き、求めるしぐさをされる。
これは銭形、これは銭形、これは銭形・・・・
呪文のようにその言葉を唱えながら、次元はその体を引きずり、風呂場へと運ぶ。
なるべく顔も体も見ないようにしながら。
・・・お、起きるな・・・いや、まだらりってるから・・・大丈夫だよな・・・・
そう思いながら、シャワーの温かいお湯を銭形にかける。
うっとりとした表情のまま、目を開くことなく湯を浴びる。
目に入ったのは、わずかに頭をもたげているその股間。
・・・見ちゃった・・・
あわてて目をそらし、後ろを向く。
だが、そんなことをしていては洗えない。
どうすれば一番いいのか・・・
さっきのようにうつぶせにしたら・・・・気づいたら溺れ死んでたなんて事にも・・・
仰向けでも・・・口と鼻に水が入って覚醒する・・・・
・・・・このまま、沈めちゃおっかな・・・・
などと物騒なことを考えながら、しぶしぶとその体を浴槽にもたれかけさせ、足を持ち上げる。
シャワーのお湯をかける様にしながら、後ろの中のものを掻き出す。
もう幸いなことにほとんど残っていなかった。
石鹸で洗ってやるかどうするか考えてとりあえず後ろのほうだけでも洗うことにする。
石鹸ですべりのよくなった指や手で、そっと撫でるように洗ってやると、気持ちがいいのかかすかなうめき声をもらす。
すまねぇなぁ、銭さん・・・・こんな目にあわせてよぉ・・・・
心の中でそうわびながら、そっとその体を洗う。
でもなぁ、もっと可哀想なのはこの俺なんだからさぁ・・・我慢してくれよ・・・・
ほんのりと肌が赤らんでくる。
がっしりとした褐色の体は、頼りなげに次元の目の前にすべてをさらす。
体に似合わないほどに、おとなしげな奥のつぼみが何かをねだるようにひくついている。
さっきの感触を思い出した。
そろりと顔を見上げるが、起きる気配はまったくない。
そっと指先でつついてやると、きゅっと音を立てるようにつぼまる。
その動きに誘われたかのように、そろそろと指先を押し進める。
かすかに抵抗するように阻みながら、それでもするりとその指は中に入る。
「・・・んっ・・」
締め付けてくる感触。
さっきとはまた違い、更に締まってきたような・・・
ぞくぞくとしたものを押し殺し、そっと指を抜き差しする。
「・・ぅ・・っ・・」
小さくうめく声もどこか甘い。
上目遣いに、その眉をかすかに寄せた表情を見上げながら、さらに大胆に指を動かす。
・・・俺、何やってんだ・・・・
頭のどこかの理性という名のものが、そうささやく。
それでいて、本能とか欲望とか言う小人たちが寄ってたかって、その指を更に奥へと進め動かせる。
女のとは違う、どこか硬質のそれでいて官能的な声と体に、何かが壊れていくようだった。
やばい・・・やばい・・・
そう思いながら、やめられない。
次元が指を動かすたびに、意識のないままに、いや、だからこそだろうが、体がうねり、何かを求めるように大胆に動く。
次第に次元の息も荒くなっていく。
浴室の曇った空気に、更に淫靡な物が混じりだす。
どうしよう・・・どうしよう・・・・
硬くなった銭形のものが目に入る。
だが、さすがにそれには手を触れる気になれない。
不意に、次元のものに何か暖かいものが触れた。
「ひっ」
思わず、そんな情けない声を上げて、体を跳ね上げる。
見れば、次元の硬くなり、銭形のもの以上にそれ帰ったそれを銭形の手がつかんでいた。
「・・な・・な・・な・・」
驚き、銭形の顔を見るが、うっとりと目を閉じたまま意識が戻っているようには見えなかった。
・・・・無、無意識・・・?
そんな馬鹿な・・・ルパンのやつ、銭さんに何を教えたんだ・・・・
手はかすかに震えるように動く。わずかな動きが加えられるだけで、次元は達しそうだった。
あ・・・・・あ・っ・・
思わず浴槽に手をつき、必死で体を支える。
銭形の甘い吐息とかすかな喘ぎが、耳にかかる。
指が更に締め付けられる。
くっ・・・
思わず、指をさっきよりも更に大胆に動かすと、銭形の口からはっきりとした甘い声が漏れた。
「・・あ・っ・・ぁぁ・・っ・・ぃ・・っ・・ぃ・・っ・」
「・・お・・俺・・・俺も・・」
思わず、その耳元でそうささやく。
わずかに、銭形の目が開いた気がした。
だが、それを確認するまもなく、次元は銭形の手の中に、その白いものを吐き出した。
そして、それと同時に、次元の腹にも、何かどろりとしたものが吐き出されるのを感じた。
とてつもない罪悪感と疲労感に悩まされながら、次元は銭形を抱え、安ホテルへと向かった。
ベットの上にまだ意識のない銭形の体を転がし、テーブルの上に昔の女の残していった口紅でメモを書く。
『昨日は素敵な夜をありがとう』
そして、真っ赤に染まった自分の唇を押し付ける。
これでいいか・・・・だまされてくれよ、銭さん。
さりげなく、洗面所の鏡の前に片方だけのピアスを置く。もちろん、昔の女のわざとらしい忘れ物だ。
曇った鏡をのぞき見れば、まだ唇は奇妙なほどに赤くまだその色を残していた。
・・・・・このままじゃ、オカマバーに出勤するとこみたいだな・・・
そんな自虐的なことを考えながら、ティッシュで唇をぬぐう。
だが、口紅というやつは、なかなか落ちないものだった。
ちぇっ・・・
ベットの上の銭形は広い背中に、いくつもの赤い後を散らしたままぐっすり寝ている。
・・・・・・・・
そろりと唇を当てる。
わずかに残った口紅が、かすかな跡を残した。
・・・・なんか、変な女みたいだ・・・
苦笑すると、次元はそっと部屋を出た。
アジトに帰ると、ルパンにこっぴどく怒られた。
「何で、何で銭さんをどっかに捨ててくるのよ」
「何でって、あんなもんここにおいとけないだろうが!」
「せっかく、一生懸命拉致してきたのに!」
「何で、あんなもん!」
「せっかくものにして、婚姻届を書こうと思ってたのに!戸籍謄本も、住民票も全部取ってきたのに!きれいにして俺とのことをなかったことにしちゃったって!」
「そういうことがしたいんなら、日本以外でやれっ!」
ほぼ、完成していたようですが、放置されていたもの。
たぶんおちがいまいちなのと、どういう体位で風呂場でやっていたのかが不明なため(?)
放置されたものと思われます。
実際・・・想像すると、かなりアクロバットになる感じが・・・・